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●法定後見の基礎知識
 民法の一部を改正する法律(平成11年法律第149号)により、従来と以下の点が変更になった。

@禁治産制度及び準禁治産制度の改正
 現行の禁治産・準禁治産の制度を,各人の多様な判断能力及び保護の必要性の程度に応じた柔軟かつ弾力的な措置を可能とする制度とするため,補助・保佐・後見の制度に改めた。

a.補助の新設 精神上の障害(痴呆・知的障害・精神障害・自閉症等)により判断能力(事理弁識能力)が不十分な者のうち,後見・保佐の程度に至らない軽度の状態にある者を対象とする。家庭裁判所の「補助開始の審判」とともに「被補助人」のために「補助人」を選任し,当事者が申立てにより選択した「特定の法律行為」について,審判により補助人に代理権又は同意権・取消権の一方又は双方を付与する。自己決定の尊重の観点から,本人の申立て又は同意を審判の要件とする。なお,代理権・同意権の必要性がなくなれば,その付与の取消しを求めることができ,すべての代理権・同意権の付与が取り消されれば,補助開始の審判も取り消される。
b.保佐(準禁治産の改正) 精神上の障害により判断能力が著しく不十分な者を対象とする。単に浪費者であることを要件とはしない(浪費者の中で判断能力の不十分な者は保佐又は補助の各類型の対象となる。)。家庭裁判所の「保佐開始の審判」とともに「被保佐人」のために「保佐人」を選任し,新たに,保佐人に同意権の対象行為(民法第12条第1項)について取消権を付与した上で,当事者が申立てにより選択した「特定の法律行為」について審判により保佐人に代理権を付与することを可能にする。代理権の付与は,本人の申立て又は同意を要件とする。なお、保佐人の同意を要する行為についても,遺産分割の明文化等の所要の改正を加えた。
c.後見(禁治産の改正) 精神上の障害により判断能力を欠く常況に在る者を対象とする。家庭裁判所の「後見開始の審判」とともに「成年被後見人」のために「成年後見人」を選任し,成年後見人は広範な代理権・取消権を付与されるが,新たに,自己決定の尊重の観点から,日用品の購入その他日常生活に関する行為を本人の判断にゆだねて取消権の対象から除外する。

A後見制度及び保佐制度の改正
@配偶者法定後見人制度の廃止 配偶者が当然に後見人・保佐人となる旨を定める現行規定を削除し,家庭裁判所が個々の事案に応じて適任者を成年後見人・保佐人・補助人(以下「成年後見人等」という。)に選任することができるようにした。
A複数成年後見人制度の導入及び法人成年後見人制度の明文化 (a)複数の成年後見人等を選任することができるようにするため,後見人の人数を一人に制限する現行規定の対象を未成年後見人に限定し,成年後見人等が数人ある場合の権限の調整規定を設けた。

(b)後記Bの規定中に成年後見人等となる者が法人である場合の考慮事情を掲げることにより,法人を成年後見人等に選任することができることを法文上明らかにした。
B成年後見人等の選任の考慮事情の明文化 本人との利益相反のおそれのない信頼性の高い個人又は法人が成年後見人等に選任されることを手続的に担保するため,成年後見人等の選任に当たって家庭裁判所が考慮すべき事情として,「成年後見人等となる者の……本人との利害関係の有無(成年後見人等となる者が法人であるときは,その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と本人との利害関係の有無)」,「本人の意見」等の事情を法文上明示的に列挙した。
C身上配慮義務及び本人の意思の尊重等 自己決定の尊重及び身上監護の重要性を考慮して,現行民法第858条の規定に代えて,成年後見人等は,その事務を行うに当たっては,本人の意思を尊重し,かつ,本人の心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない旨の一般的な規定を創設する。また,身上監護に関する個別的規定として,成年後見人等による本人の居住用不動産の処分について,家庭裁判所の許可を要する旨の規定を新設した。
D監督体制の充実 成年後見監督人に加えて,保佐監督人・補助監督人の制度を新設するとともに,成年後見人等を選任する場合と同様の考慮事情(前記ウ)を規定することにより,法人を成年後見監督人・保佐監督人・補助監督人(以下「成年後見監督人等」という。)に選任することができることを法文上明らかにするなど,所要の規定の整備を行った。

 
■関連整備法令

@民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律第151号)
 民法の一部を改正する法律の施行に伴い,「禁治産」「準禁治産」等の用語の整理のほか,判断能力の不十分な者の保護を図る同法の趣旨・目的に沿った整備等を一括して行うものである。

(ア)市町村長の申立権
 身寄りのない痴呆性高齢者・知的障害者・精神障害者等に対する適切な成年後見の開始を制度的に担保する観点から,老人福祉法・知的障害者福祉法・精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の中に,補助・保佐・後見の開始の申立権を市町村長に付与する旨の規定を設けた。

(イ)欠格条項の見直し
 現行法令中の禁治産者・準禁治産者に関する欠格条項の見直しに関しては,ノーマライゼーションの理念等の観点から,@新設の補助については欠格条項を付さない,A後見・保佐についても,当該法令中の能力審査の手続により当該資格に相応しい判断能力が担保されるものについては,現行の欠格条項を削除するという統一的な方針の下に,関係法律の整備を行った。

A後見登記等に関する法律(平成11年法律第152号)
 戸籍への記載に代えて,法定後見及び任意後見契約に関する新しい登録制度として,成年後見登記制度を創設し,原則として裁判所書記官又は公証人の嘱託により,登記所に備える登記ファイルに法定後見及び任意後見契約についての所要の登記事項を記録するとともに,代理権等の公示の要請とプライバシー保護の要請との調和の観点から,本人,成年後見人等,成年後見監督人等,任意後見受任者,任意後見人,任意後見監督人その他一定の者に請求権者を限定した上で登記事項証明書を交付するものとする。



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