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| ●遺贈か相続か?「相続させる」という遺言 |
相続と遺贈の違いは、相続とはなんら手続きを経ることなく当然に被相続人の財産が相続人に引継がれることをいいます。これに対し遺贈というのは、つまり遺言による贈与のことです。一般的には相続人以外の者に遺産を与える場合に「遺贈する」という表現をしますが、相続人に対しても遺贈することはできます。遺贈とは相続とは、大きく分けて以下の面で異なります。
@遺贈は相手が相続人である必要はありませんが、相続の場合、相手は相続人にかぎられます。
A登記手続きについて、遺贈なら相続人との共同申請となりますが、相続の場合は単独で申請できます。
B農地の取得について、遺贈なら相続登記に知事の許可が必要ですが、相続なら不要です(包括遺贈であれば不要)。
C借地権・借家権の取得について、遺贈の場合は原則として賃貸人の承諾が要るが、相続の場合は要りません。
※なお、以前は「相続させる」とした場合と、「遺贈する」とした場合における登録免許税の違い(「相続させる」の場合では登録免許税は課税標準価格の
1000 分の 6 であり、「遺贈する」の場合には登録免許税は課税標準価格の 1000
分の 25 であった)が最も大きかったといわれています。しかし、平成 15 年度の登録免許税の改正によって、相続人が遺贈によって所有権移転の登記を受けた場合には、相続による所有権移転の登記に係る税率を適用することに改正されました(但し、あくまでも相続人が遺贈をうける場合であり、相続人でない者への遺贈と相続とでは税率が異なります)。これにより、相続人が遺贈によって所有権移転の登記を受けた場合と相続による所有権移転の登記場合に於ける登録免許税での差異は解消されました。
そこで、実務上は早くから、ある特定の遺産を特定の相続人に取得させる場合に、遺言書に「相続させる」という文言を使用して、遺贈ではなく相続であるとしようとする手法を採用していました。これに追随して、最高裁判所は平成3年に、おおよそ下記のような内容の判決をだして、「相続させる」旨の遺言は、特段の事情のない限り「当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解すべきで」あり、特段の事情のない限り「何らの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継される」ものとしました。
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【参考】最高裁は平成3年4月19日第二小法廷・判決
平成1(オ)174 土地所有権移転登記手続(第45巻4号477頁)
【判示事項】判示事項
一 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言の解釈
二 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合における当該遺産の承継
【要旨】
一 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解すべきである。
二 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継される。
【参照・法条】民法908条,民法964条,民法985条
【内容】
(前略)
被相続人の遺産の承継関係に関する遺言については、遺言書において表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきものであるところ、遺言者は、各相続人との関係にあっては、その者と各相続人との身分関係及び生活関係、各相続人の現在及び将来の生活状況及び資力その他の経済関係、特定の不動産その他の遺産についての特定の相続人のかかわりあいの関係等各般の事情を配慮して遺言をするのであるから、遺言書において特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言者の意思が表明されている場合、当該相続人も当該遺産を他の共同相続人と共にではあるが当然相続する地位にあることにかんがみれば、遺言者の意思は、右の各般の事情を配慮して、当該遺産を当該相続人をして、他の共同相続人と共にではなくして、単独で相続させようとする趣旨のものと解するのが当然の合理的な意思解釈というべきであり、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、遺贈と解すべきではない。そして、右の「相続させる」趣旨の遺言、すなわち、特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させようとする遺言は、前記の各般の事情を配慮しての被相続人の意思として当然あり得る合理的な遺産の分割の方法を定めるものであって、民法九〇八条において被相続人が遺言で遺産の分割の方法を定めることができるとしているのも、遺産の分割の方法として、このような特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させることをも遺言で定めることを可能にするために外ならない。したがって、右の「相続させる」趣旨の遺言は、正に同条にいう遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ないのであるから、このような遺言にあっては、遺言者の意思に合致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである。そしてその場合、遺産分割の協議又は審判においては、当該遺産の承継を参酌して残余の遺産の分割がされることはいうまでもないとしても、当該遺産については、右の協議又は審判を経る余地はないものというべきである。もっとも、そのような場合においても、当該特定の相続人はなお相続の放棄の自由を有するのであるから、その者が所定の相続の放棄をしたときは、さかのぼって当該遺産がその者に相続されなかったことになるのはもちろんであり、また、場合によっては、他の相続人の遺留分減殺請求権の行使を妨げるものではない。
(後略)
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